見て

髪を抜く　虚ろな目で　髪を抜く

「禿になるよ」　お母さんが言う

「なってもいい」　私が言う

「手を繋ごう」　お母さんが言う

「嫌だ」　私

「お母さんと手を繋ごう」　お母さん

片手を繋ぐ

「もう片方も」　お母さん　無理して笑顔作ってる

「嫌だ」　私

「髪が抜けないから」　私

しばらくして　手を繋ぐ

また髪を抜こうとして　手を離そうとすると　お母さんが　ぎゅっと握る

「離して」　私

「嫌だ」　お母さん

そんなことの繰り返し

私　怒る

「お母さんは　私がして欲しい時にはしてくれないくせに」

お母さん　離す





目を瞑るお母さん

「見てよ」　私

「こっちを見てよ」　私

「見てるよ」　お母さん

しばらくすると　また目を瞑ってる

「見てよ」　私

「ずっと見ててよ」　私

「いつも見てるよ　いつも心は見てるよ　目を瞑ってても　いつも考えてるよ」　お母さん

「だめ　見てくれてなきゃだめ」　私

「足りないの　まだまだ足りないの」　私

「ずっと見ててよ　ずっと見ててよ」　私

「お母さん　なみこのそんな姿　みてるの辛いのよ　だから　目を瞑るのよ　それでも見てと言うの」　お母さん

「見ててよ」　私







足りない　足りない　足りないの

淋しくて　淋しくて　しかたがないの

お母さんの目から　涙が出る

私のせい

ごめんね

私　足りないのよ

もっと見てて欲しい

もっと一緒にいてほしい

さみしいよ

さみしいよ

ごめんね　お母さん

苦しめて　ごめんね